2024年8月12日

【報告】定例勉強会2「ASD者の就労の課題と支援―BWAP2アセスメントに基づいた就労支援―」

 【報告】TEACCH研東京支部2024年度定例勉強会② 「ASD者の就労の課題と支援―BWAP2アセスメントに基づいた就労支援―」

7月27日(土)梅永雄二先生、髙橋幾先生をお迎えし、定例勉強会2を行いました。
 発達障害の人の就労支援の現状と課題、社会自立における問題点、米国の現状等をお話いただきました。
 現在、知的障害のない精神障害者保健福祉手帳を取得した発達障害者の就労率は増加しており、特性を理解した就労支援が急務です。
 発達障害の人の離職理由として、仕事そのもののスキルではなく、90%以上がソフトスキル(仕事以外の対人関係や職場のルールやマナー、余暇、金銭管理等)のトラブルによるもので、きちんとアセスメントして支援をしないと定着できないことと教わりました。 職業生活遂行能力であるソフトスキルは、学校や家庭で小さい時から身に着けておくべきライフスキルの延長線上に位置するもので、支援者は、本人のニーズや職業をよく知ること、新しい発想でサポートをしていく必要があります。発達障害の中でもASD(自閉症スペクトラム症)を主なターゲットとして就労支援を進めることが重要です。ポイントとしては、社会性の面で発達が遅れているということ、実行機能の弱さ(仕事を始める能力、計画を立てる能力、優先順位をつける能力)があること、感覚刺激への対応です。そこでソフトスキルの項目が多数導入されているBWAP2を活用して、就労のために必要なスキルのアセスメントを行うことが有効です。4つの領域からなり、1仕事の習慣・態度、2対人関係、3認知スキル、4仕事の遂行能力で5段階の評価基準で実施します。評価基準の中に芽生え(低)(高)があり、支援の目標を立てることにつながります。また、合格は本人の強みで推薦できるスキルが明確になります。
 午後は、実際に映像を見ながらBWAP2のアセスメントを行いました。その中で、評価者によって異なる評価となった場合、大切なのは、支援者同士が共有し支援の目標をたて、支援につなげることです。生活上何が困っていて、どのような支援が必要かを整理すること、できないところは、人の援助を受ける、相談するスキルを教えることが大切です。また、就労支援においては、ASD者が働く職場をどのように変えていくか発想の転換も必要で、職種のマッチング、職場の物理的構造化、同僚上司の理解啓発、ソフト(ライフ)スキル支援についてアセスメントをもとに個々に応じたサポートを続けることが定着につながります。
 今回の勉強会で、より具体的で適切な支援をするためのアセスメントであること、ASDの方への支援には、構造化のアイディアが不可欠なことを学びました。また、本人を知る人であれば誰でも簡単にアセスメントができるBWAP2の魅力も知ることができました。参加した皆さんもすぐに支援に役立てていただけると思います。
参加者感想を一部ご紹介します。
*BWAP2について初めての研修会でしたが、講師の先生方の話がわかりやすく、しかも面白くてどんどん引き込まれていきました。 実際に映像を見てチェックを付けていく活動では、近くの方々と自分の評価の違いに戸惑いましたが、違っていてもよく、どうしてその評価をしたか話し合えた点がとても良いと感じ、職場で利用してみたいと感じました。
帰りに早速梅永先生の本を購入したので、今後も勉強をしていきたいと思います。
*ソフトスキルを図るアセスメントをとることで、利用者の状態の理解、共有が測れる。
また誰でも簡単にアセスメントが取れること。
本人とフィードバックした時に提示出来るので、明確な資料になり、本人や支援者、関係者の意識のギャップを埋めるのに効果的だと感じた。
講義でもあったが、アセスメントをとった後、意見が違う部分のすり合わせをしていくこと、事業所単位で基準を設けることが大切だと感じた。
*改めてASDの人が生活を送る上で何が困難になるのかを整理して頂きました。梅永先生や高橋先生のお立場から、就労支援の事例が中心ではありましたが、「生活者」として躓く点が「ライフスキル」であり結果として就労にも大きくそのことが影響を及ぼす結果となることが大変分かりやすかったです。
「アセスメントはどこに支援のニードがあるか、何を支援するのか理解する為にある」というご趣旨も大変印象に残りました。
*支援を行うには、アセスメントが重要であることを再認識しました。BWAP2は、簡便にアセスメントできるところが魅力的ですが、アセスメントから支援を行う際に、専門的な知識が必要になるため、自己研鑽していくことも重要であると思いました。
午後の事例紹介を含め、貴重な講演会をありがとうございました。
*当事者の方をよく知っている方であれば誰でも短時間で取ることができるというのがとても魅力に感じました。今後就労選択支援が始まる際にも役立てられるかと思いますし、支援に取り入れていきたいと思います。
講師の先生方、参加者の皆様、猛暑の中長時間にわたり誠にありがとうございました!