2024年6月25日

【報告】2024年度定例勉強会①「ASD(自閉症スペクトラム)の特性理解」宇野洋太先生


622日(日)にオンラインにて、今年度最初の定例勉強会とワークショップを開催しました。

長く自閉症スペクトラムの方への支援・研究を続けていらっしゃり、現在TEACCH研究会東京支部の会長でもある、よこはま発達クリニック副院長 宇野洋太先生を2年ぶりに講師にお招きしました。

 オンラインで、後日配信つきの形式ということもあり、全国から170名近くのお申し込みをいただきました。(現在後日配信を行っています(~77日配信終了)

 午前(9:3012:00)の講義は、自閉症スペクトラムの脳と定型発達の脳に質的な違いがあることについて、「リンゴとバナナの共通点は?」という問いに対する答え方の違いを例にとってのお話しからスタートしました。認知特性自体は多数派か少数派かという違いであってそれ自体が障害ではないこと。ASC(自閉症スペクトラムコンディション)という概念も提唱されているということ。さらに、ニューロダイバーシティという近年取り上げられてきた概念についても取り上げられ、そこから自閉症スペクトラムの人の認知特性について一つ一つご説明いただきました。本人が自立して活動・行動できるように、ASDフレンドリーな環境を作ることが必要であること、お会いするASDの方がその人らしくハッピーに暮らしていけるように、背後から黒子のように支えるのが支援者・専門家としての役割で、そのために学び続けたいというお話で講義が締めくくられました。先生の自閉症スペクトラムの人への愛にあふれたお言葉に、自分の支援している方々の顔を思い浮かべ、その方たちの為に学びの足を止めないようにしなくてはと、ついつい怠けてしまう自分に喝を入れていただいた気持ちになりました。

午後(13:3015:30)は、「特性1000本ノック」と、氷山モデルを使ったワークの二本立てでした。ZOOMのブレイクアウトルームを使ってのグループワークで、画面越しの限られた時間の中でしたが、様々な年齢やお立場やご経験を持つ参加者から積極的な意見が交わされました。
 「特性1000本ノック」では、自閉症スペクトラムの方の様々な行動の裏側にはどんな特性が関係しているのかをグループで検討しました。多くの方にとってすぐに理解しにくい「社会的想像力」が、どのような形で行動に現れるのか考えることに重点が置かれたワークでした。行動だけ見ると様々でも、背景には同一の特性があり、特性に基づかない表面的な対応では当事者の支援にはならないという先生のお話しが印象的でした。「同じ質問ばかりする」「新しい作業を嫌がる」など、支援現場でよく見られる行動がピックアップされていたので、現在支援している方のお顔が浮かんだ参加者も多かったのではないでしょうか。
 氷山モデルを使ったワークでは、架空事例をもとに、その行動の背景は何か、そこからどんな改善方法・工夫が考えられるかをメンバーで話し合いました。「問題行動」の背景には何があるのか、特性・環境面から皆でたくさんの仮説を立て、それに基づいて改善策・対応策を考えるという、明日から現場で生かせるワークでした。 

今回も参加者の皆さまから、多くの感想を頂きましたので、アンケートの中から一部ご紹介致します。たくさんのご意見をありがとうございました。

「講義」アンケートより
・自閉症のある方を理解する根本を見直すよい機会となりました。
・久しぶりに宇野先生のお話を伺うことができ、改めて自閉症スペクトラムの特性理解をしなくては、と思いました。支援のためには理解が必要だと普段から思ってはいても、お話を伺うと「そうだった!」と気づかされることが多く、くり返し学ぶことの大切さを感じました。
ASDの特性を理解することはどういうことなのか学ぶことができました。行動を制限してしまうことがあったことを思い出し、本人にとって負荷のかかる支援をしてしまっていたことを反省しました。 今回の講義を通して、ASDの方一人ひとりの特性をアセスメントし、それによって環境を整え、本人たちがより適切な行動をおこせるように寄り添っていく姿勢を改めて意識することができました。

「ワーク」アンケートより
初参加でとても緊張していましたが、様々な立場の方と交流しお話しすることができ、よかったです。また、講義もとても理解しやすかったです。
1人の意見だと視野が狭くなるので,全く違う事業所の意見を聞くことで改めて情報を収集して的確に判断することや、チームで支援をすることが大切だと感じました。

宇野先生、ご参加の皆さま、ありがとうございました。

【勉強会担当】