2023/11/05

【報告】2023年度定例勉強会2「構造化」

 2023年度定例勉強会2「構造化」 
 講師:安倍陽子先生


 2023年11月3日(金)全水道会館にて、「構造化ASDの人たちの特性理解から支援へ」~自己効力感・自尊感情を育む~を開催しました。
 講師は、現在横浜市東部地域療育センターに勤務され、日々、発達障害などASDのお子さんたちの療育やご家族の相談をされている安倍陽子先生でした。
 午前中は講義、午後はワークショップと、1日を通して構造化について、具体的でより実践的に、すぐに現場で役立つ内容を学ぶことができました。

 午前中の講義では、「構造化」の基本的なこと、ASDの人たちの学び方の違いについて、得意なことや苦手なこと、なぜ構造化するのか、具体的な例を挙げながらわかりやすく教えていただきました。支援にむけて何を教えるのか、指導領域や構造化のアイディア(物理的整理統合、スケジュール、ワークシステム、マテリアルストラクチャー)を丁寧にご説明いただきました。講義の後半には受講者の皆さんで教室のレイアウトを構造化の意味を考えながら検討する時間がありました。

 午前の講義の中で、構造化をすることは、自分で判断して行動できるようにするためであり、本人の強みを生かしながら学習スタイルや理解の度合いに合わせて行うことが大切であるということを改めて実感しました。スケジュールは、予定や変更を伝えるシステムであり、ASDの人に見通し、安心して活動できるようになるだけでなく、変化を伝えることで変化への耐性をつけ、柔軟性を養うことができる重要なシステムであることも教わりました。

 先生のお話の中で「ASDの人が混乱することは、できないのではなく、わからないことが多い、だから環境を整えて不確定、混乱させる要素を意味のある形にしていくこと、わかることで安心し、やることが明確になることで自ら行動でき、自信が持てるようになる、だから私たちは創造力を必要とする、工夫をしていかなきゃならない」とおっしゃった言葉に力をもらいました。

 午後のワークショップでは、架空事例から構造化ワークシートを活用し、物理的整理統合、スケジュール、ワークシステム、マテリアルストラクチャーの根拠(学習スタイルと個別のアセスメント)、現状の確認(観察と聞き取り)、構造化、発展(般化、柔軟性)のアイディアを先生からヒントをいただきながらまずは個人でシートを記入しました。その後3つのグループに分かれて構造化のワークシートと教室のレイアウトに構造化のアイディアを検討して記入しました。最後にグループごとに発表し先生からの助言を受けました。
 午後のワークショップは、3つのグループとも短い時間の中で構造化の基本的なことを検討しながら教室レイアウトを完成させました。各グループが架空事例から読み取った本人の特性や強味などから構造化に取り組み、スケジュールについては、形態(文字、写真、絵、シンボル等)、長さ、扱い方、開始の手がかり、設置場所など説明しました。ワークシステムについては、形態(色、文字、記号、絵)、組織化(左から右、上から下)、進捗状況の確認、終わり方、課題の場所、片付け場所を示しました。マテリアルストラクチャーについては、時間が足りない部分もありましたが、それぞれ工夫して課題を考え発表しました。その際、視覚的指示の形態や順序立て、注目注意を強める方法、情報と教材の整理統合の方法(かごに入れたままの課題なのか等)課題を考える上でのポイントを先生よりご助言いただきました。また、生活にいかに般化できるかを考えながら構造化を行い、本人の状況や理解の状況に合わせて再構造化していくことの大切さも学びました。ファシリテーターも含め全員が様々な視点に気付くことができ、活気あふれるよいワークになったと思います。

 安倍先生には、多くのマテリアルストラクチャーをご持参いただき、ご厚意に感謝いたします。アンケートからも「感激して涙が出た」「すぐに参考にしたい」など多くの感想が寄せられました。今回の勉強会は、安倍先生のお人柄とASDの方への支援をリアルに現場で生かせるようにしたいという熱意に心動かされる会となりました。
 
 ありがとうございました。