2022/09/24

【報告】2022年度定例勉強会3 『ASDの方の評価のポイント』

【報告】2022年度定例勉強会3
ASDの方の評価のポイントーようこそ新版K式の世界へー』

911日(日)南山城学園SVの澤月子先生に新版K式発達検査のご講演を頂きました。
午前中の講義は、旧版である「2001年式」の新版K式発達検査と最新版である「2020年版」新版K式発達検査の比較から、更新まで19年の年月を経て、実際に検査用紙の検査通過年齢の変化をご説明頂きながらここ約20年の「知能」や「発達」の捉え方が社会において変化してきていることをご説明頂きました。

 

先生のご説明では、インターネットやスマートホンの発達に伴い、昔に比べて「見る力」の平均発達年齢は早まっているのに対して、言葉の表現力や折り紙を折る等の手先の巧緻性の発達は生活習慣や経験の変化により遅くなっているそうです。昔に比べると「知識」があまり重視されなくなってきているのは、知識や情報についてはインターネットを検索すればいくらでも調べられるからで、現代においては「見て・推理して・応用する」力の方が「知能」の評価においては重視されてきているというご説明はとても説得力を感じました。

 

また、新しく追加された「相手の立場」から想像する「こころの理論」や模倣の力を見る「人形遊び」の項目,「覚える力」を見る「短文復唱」のお話を通じて、最近の動向として発達障害の概念の普及が社会で進んでいることも影響していることを改めて振り返ることができました。

 

各発達水準毎に使い分けられる検査用紙のご説明を通じて、幼児期から学童期,成人期までの発達の概要をご説明頂くことができ改めて「定型の発達」を知ることが、ASDの方の発達の特徴を知ることについて学ぶことができました。

 

個人的に印象深かったことは、冒頭に澤先生がお話された「支援者自身のアセスメント」という論点について、「発達年齢を正確に知ることは勿論大切だけれども、検査不通過であっても『当事者支援の手がかりを知る為に』どのような『手立ての工夫でその人ができた』か知る事,『できない時にどのような反応を見せるかを知っておくこと』が当事者を理解する上で一番大事」というご説明は、去年同じ「評価」でご講演を頂いた石川支部代表の笠合竜明先生のお話と重なる視点であり、「アセスメントの目的を見失わない」ことの大切さを振り返ることができました。

 

午後は貴重な検査場面の動画2例を通じて、新版K式発達検査を用いながら、それぞれの被験者の方の発達の特性を丁寧にご説明頂きました。

澤先生がそれぞれの被験者の方のつまづきを推測しながら、検査項目の順序を変えてみることで「注意移行の難しさ」「不注意の問題」「感覚刺激に逸れる反応の意味」など、インフォーマルな視点からの工夫で被験者の方の発達特性が浮彫りになっていく様子が大変分かり易かったです。

 

また、同時処理の苦手さはあっても継時処理を丁寧に行えることを「強み」として被験者にフィードバックするエピソードを通じて、午前中に思いだした「検査」「評価」することの目的や意味,「当事者に寄り添う」ことの意味について深い示唆を頂くことができました。

澤先生、一日を通じてご熱演ありがとうございました。

 

TEACCHプログラム研究会 東京支部   社福)正夢の会 パサージュいなぎ 堀内太郎